バイオマスと街づくり

八千代モデル

「八千代モデル」商標登録5440201号

八千代町におけるバイオマス利活用の基本方針

茨城県八千代町は全国でも有数の農業地帯であり、バイオマスタウン構想の推進に当たっては農業を中心とした利活用を図ることで、本町農業の価値を一層高めることができます。特に、堆肥の利活用により、堆肥中の炭素が土中で固定されることによる CO2削減等を強く意識した農業を推し進めたいと思います。

 

バイオマスは薄く広くあるため、収集の労力や費用が多くかかり、バイオマス利活用事業としては経済性が低くなる場合が多いのですが、これを解決するための一つの方策として、発生元での分散回収加工を行い、発生元の近くで利活用することで経済性を向上させる(地産地消)ことができます。したがって、集合的な大型施設を建設するのではなく、小型分散型の設備を導入し、段階的に拡充していく手法を採用したいと思います。 このためには、従来のバイオマス技術の枠組みに捉われず、柔軟な発想で新技術を取り入れていく(小規模で簡易なバイオマス変換技術)必要があります。また、堆肥化・肥料化のように臭気を伴うバイオマスについては、臭気対策を十分に考慮しなければなりません。

 

以上から、「小規模分散型オンサイト変換・利用」の「八千代モデル」を構築し、情報発信していくものとします。

バイオマスの利活用

八千代町に存在するバイオマス資源


① 家畜排せつ物(主に肉牛糞)、稲わら、もみがら、落葉

【変換方法】

*堆肥化

 

【収集、変換】

*地域内の家畜は、乳用牛、肉牛、豚、採卵鶏及びブロイラーが飼育されているが、採卵鶏については主に地域内の企業が大量生産しており、排せつ物については堆肥化されています。一方、乳用牛、肉牛及び豚については個人の畜産農家で飼育し、排せつ物は堆肥化を行うのが一般的です。いずれの家畜排せつ物もほぼ全量堆肥化されていますが、農家の高齢化に伴い、排せつ物を自ら処理を行うのではなく、他所で処理をしてもらえれば助かるとの声もあります。したがって、畜産農家近傍に新たな共同の堆肥化施設ができれば、そちらでの堆肥化を希望する農家も多いものと思われます。このことから、数戸規模の家畜排せつ物を主体とした堆肥化施設の設置を積極的に推進します。

*水分調整材としては、利活用が少ない稲わらやもみがらを使うことを検討します。稲わらは、敷料として使用後、排せつ物と一緒に堆肥化を行います。もみがらはそのまま使うことも考えられますが、堆肥の一層の効果を期待して、後述する発酵もみがらを利活用することを検討します。

*さらに、良質堆肥を作るために、落葉を収集し、堆肥化原料とします。落葉に含まれる良質なミネラルを取り込むことで良質堆肥の製造を行うことができます。

 

【利用】

*十分に熟成し、軽量で散布し易い堆肥に仕上げるとともに、土壌の物理性改良機能、肥 効機能及び土壌微生物生息機能をバランスよく持つ堆肥にします。

*これらの堆肥を近隣の耕種農家に利活用してもらい、意見交換を通して堆肥製造の改善を図っていきます。

② 家畜排せつ物(主に乳用牛糞、豚糞)、食品廃棄物(乾燥)

【変換方法】

*土壌改良資材化

 

【収集、変換】

*特に水分の多い乳牛糞や豚糞については、前記の堆肥化のほかに、家畜排せつ物に生石灰(CaO)を加え、強撹拌して化学反応させたのち天日乾燥させて土壌改良資材をつくるシステムを検討します。このシステムでは、家畜排せつ物に生石灰を加えることで臭気を軽減し、雑菌を死滅させる効果があります。また、この資材を土壌に投与することで、pH の調整(酸性土壌の中和)とともに土壌構造の改善を図ることができます。

*水分が多すぎる場合には別途食品残さを乾燥した半製品を加えることで水分調整を行うものとします。

*この家畜排せつ物の変換システムは、比較的小型の装置であり操作が短期間で完了するので、車載型の装置により訪問サービスすることを検討します(オンサイト変換)。この装置で変換された原料は、ビニールハウス内で天日乾燥して最終製品とします。

 

【利用】

*近隣の耕種農家に使用してもらう。

③ 農業集落排水汚泥、米ぬか

【変換方法】

*肥料化、(メタン発酵化)

 

【収集、変換及び利用】

*本町から発生する農業集落排水汚泥は、下妻地方広域事務組合のし尿処理施設「城山公苑」で集中処理されていますが、川西北部地区と川西中部地区の農業集落排水処理施設から発生する汚泥については肥料化されています。施設は川西北部地区に一式設置されており、川西中部地区からは汚泥を川西北部地区に搬送して肥料化操作が行われています。

*この施設では汚泥に米ぬかを加え水分調整したのち機械式発酵装置で肥料化しています。 生産した肥料は、無料で町民に還元されています。

*今後、その他の農業集落排水処理汚泥についても、オンサイトで安価な肥料化システム の導入を検討するものとします。

*生産された肥料は、町民の農業用に還元します。

*また、将来の総合的バイオマス利活用の観点から、農業集落排水汚泥を中心としたバイオマス資源のメタン発酵化を中長期的テーマとして検討します。

④ し尿処理汚泥

【変換方法】

*肥料化

 

【収集、変換及び利用】

*本町から発生するし尿は、前記のように農業集落排水処理汚泥及び合併浄化槽汚泥とともに下妻地方広域事務組合のし尿処理施設「城山公苑」で集中処理されています。し尿処理場「城山公苑」から発生するし尿汚泥は、これまでは施設内に設備された脱水・乾燥機により製品化して販売されていましたが、販売不振により現在は、ごみ処理施設「クリー ンポートきぬ」に搬送され、焼却処分されています。

*し尿処理施設は、広域の施設であり町外の地域に設置されているため、汚泥を搬送して 町内で利活用することは難しく、汚泥の焼却にコストがかかることから、し尿処理事業者より肥料化等での活用を望む声があります。

*本町は、農業生産量が多いにもかかわらず肥料化用バイオマス資源が少ない中で、し尿処理汚泥は魅力的な肥料化原料となるはずです(日量8~10 トン発生)。今後は、この汚泥の肥料化を中長期的な検討テーマとします。

⑤ 下水汚泥

【変換方法】

*セメント原料化

 

【収集、変換及び利用】

*公共下水については、広域の鬼怒小貝流域下水道が整備されており、下水処理施設「きぬアクアステーション」で処理されています。本町は平成18年度から供用が開始されたばかりで、下水汚泥は多くはありませんが、本町分の汚泥はセメント原料として業者を介して再利用されています。今後ともこの方法を継続するものとします。

⑥ 食品残さ、生ごみ

【変換方法】

*肥料化、乾燥化

 

【収集、変換及び利用】

*食品残さ及び生ごみについては、自家処理(コンポスター処理)が多いため利用可能量 は多くはありませんが、全量が焼却処分されています。今後、収集し易い排出先からの食品残さ及び生ごみを回収して肥料化や乾燥して製品化していきます。

*当面、1か所当りの発生量の多い給食センターや事業所の残さを対象として進め、地域 での理解を深める中で面的な拡大を図っていくこととします。

*食品残さや生ごみの収集は衛生的にも大きな負荷がかかるため、排出先に小型の肥料化 装置を分散配置し、オンサイト変換を行うこととします。生産された肥料は収集して販売する体制を整備します。

*一方、食品残さをオンサイトで乾燥し、半製品として前記家畜排せつ物の土壌改良資材化等の水分調整材としての利活用も検討していきます。

⑦ 稲わら

【変換方法】

*飼料化、敷料利用

 

【収集、変換及び利用】

* 現在、稲わらについては、多くが水田へ鋤き込みされていますが、今後は稲わらを回収して飼料や敷料として活用することを推進していきます。このために、耕畜連携の作業体系を確立するよう努めます。

⑧ もみがら

【変換方法】

*敷料利用、発酵(発酵もみがら)

 

【収集、変換及び利用】

*現在、もみがらについては、敷料や堆肥化原料として利用されていますが、利用されずに 廃棄されているものも多くあります。今後このような堆肥化原料を中心にした活用をさらに促進していきます。

*茨城県内のベンチャー企業(グリーンエコ合同会社)により技術開発された発酵もみがら化を推進していきます。発酵もみがらは、し尿処理場等の排水を浄化した放流水に酵素を加えた液にもみがらを浸漬し、そのあと水切りしたもみがらに米ぬか等を加えて攪拌機で発酵促進させ、最後に堆積・切返しを経て製造されます。 一般的に、もみがらは畑や水田に施用してもなかなか分解されないが、このようにして製造された発酵もみがらは、外皮が破壊され、中のケイ酸が溶出します。発酵もみがらは、指でも簡単につぶせる程度にもろい性質になります。発酵もみがらの効果としては、ケイ酸による生育促進効果や土壌の団粒化促進効果など、多くの機能を持っています。特に、生ごみ肥料との組み合わせで土壌散布することにより一層その効果を高められることが実証されています。この発酵もみがらを単独で農業に利活用するほか、上記の各種肥料化プロセスとも連携してより効果のある肥料製造を行っていきます。

⑨ 廃食用油

【変換方法】

*ボイラ燃料化、(バイオディーゼル燃料化)

 

【収集、変換】

*現在町内から排出される一般廃棄物系廃食用油は、ほとんど活用されていません。今後、 廃食用油を収集して利活用するものとします。

*廃食用油の収集に当っては、先ず学校給食センターのように比較的収集しやすい場所からの廃食用油を後述のように利活用することで町民に啓蒙普及し、将来的には家庭の廃食用油を回収する社会システムを構築したいと思います。

*廃食用油の変換方法は、比較的簡易であって不要な副産物の出ないボイラ燃料化とします。 ボイラ燃料化技術としては、エマルジョン化の技術が知られています。

*一方、休耕地を利用して菜の花やヒマワリを栽培し、観光客の誘導とともに食用油を生産・消費し、廃食用油を回収する循環システムの構築も目指します。

*さらに、代案として廃食用油のバイオディーゼル燃料化についても検討を進めます。

 

【利用】 

*廃食用油原料の重油代替ボイラ燃料は、町内の公的施設、たとえば、給食センターや町 営の温泉施設である「憩遊館」のような施設のボイラ用として利用します。

*また、エマルジョン燃料の場合には、給食センターのボイラ等の一般ボイラ向け燃料とします。

⑩ 剪定枝(街路樹、公園、果樹等)、農作物残さ

【変換方法】

*ペレット化

 

【収集、変換及び利用】

*剪定枝(街路樹、公園等)は、比較的多く賦存していますが、ほとんどは利用されないで焼却さ れています。

*また、ナスやメロン等の残さは畑に鋤き込まずに、一部では焼却処分されている実態があります。

*今後は、これらの剪定枝や農作物残さを燃料化すべく、ペレット化の検討を行います。

*ペレット燃料の利用先としては、ハウス暖房や憩遊館の暖房用等を想定しています。

[ 八千代町バイオマスタウン構想より ]

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